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第四部・お前にはふさわしくない

第21章また踊らせてくれない建物

又一栋不许人跳舞的房子

中国語の原文からの翻訳です。

第21章 また踊らせてくれない建物

街が半秒、静まった。建物の正面からテープがひとりでに生え出し、広場の中央の彫像を一巻きまた一巻きと縛り上げた。

遠くの霧の中で、鉄塔の下半分に細い光が一筋灯った。光は白く、白の中にわずかな暖かみがあった。それは塔の足もとから上へ伸びて一本の柱になり、鉄骨を抜け、ひたすら上へ、視界の外へ出ていった。塔の頂はやはり見えなかった。塔の下半分には、灯りが一列また一列。彼女は一列を数えた。十二個目まで数えたところで、霧が残りを持ち去った。細い光がその一列の灯りを真ん中で切り分け、両側の灯りはどれも動かなかった。

その光は擦り切れた靴先から離れ、広場の向かいの建物の壁へ移った。窓枠がまず一本赤くなり、二本目が続いて赤くなった。赤いテープが壁面から這い下り、建物の角まで這い、さらに石段脇の鉄の手すりまで這って、一巻きが一巻きを押さえた。その赤は、温度のない赤だった。

彫像は布をまとった人で、低い台の上に立っていた。赤いテープが布の縁から巻き上がり、台の面まで巻いていた。布の襞は七本あり、テープに押さえられた所は襞が平らに潰され、白い跡が一本残るだけだった。台座の一角に字が刻まれていたが、字の半分はテープに押さえられ、彼女には全部は見えなかった。彫像の横には空の額縁が一列立てかけてあった。額は白く、中には何もなく、それも縛られていた。テープには小さな番号が一列印刷され、一寸ごとに繰り返されていた。番号のあいだに、いくつかおきに、四角い印が一つあった。印の中に字はなかった。

通りの人々はその場で止まっていた。誰も叫ばなかった。テープが引き締められる音だけがあった。一巻き、また一巻き、どの一巻きの音も同じだった。

地下鉄の出口から一人が出てきて、階段の上で広場を一目見ると、動かなくなった。向かいの建物の入口から制服を着た二人が出てきて、手にそれぞれ赤いテープを一巻き持ち、階段の下に立って、テープがゆっくり伸びていくのを見ていた。そのうち一人が手の中の巻きに目を落とし、巻きを階段に置いた。平らに置き、巻きの縁を階段の縁に揃えた。二人は手を出さなかった。

鳩が石段に止まっていて、飛ばなかった。清掃車が広場の端に停まり、ホースはまだ地面に引きずられたままで、口から水がゆっくりしみ出していたが、誰も止めに行かなかった。運転している人は濃い色の手袋をはめ、車の中に座ったまま、降りてこなかった。遠くの大通りでは、バスが一台交差点に停まっていて、ドアが開いていて、窓の中に人はいなかった。霧の縁が広場の縁に押しかぶさり、中までは押し入れなかった。

北からやや西寄りの空に、あの円がまだ掛かっていた。円の横、円より少し高く、塔の側に寄ったところに、黒い口が一つ開いていた。明るい面は昨夜よりずっと広く、半分を過ぎ、縁は淡い紫だった。暗い面には砕けた光があり、一片また一片。通りの誰も顔を上げなかった。

スワンが石段の上から下りてきた。

彼女はいちばん上の段から下りていった。石段は全部で二十六段あり、いちばん下の三段は幅が広く、人が立てた。あの日、彼女は九段目に座り、あの人の一節を全部見終えた。下りてきたとき、技術的なことを一言だけ言った。言うとき見ていたのは相手の足だった。

一段下りるたびに、靴底がまず石の縁に触れ、それから石の面に触れた。二十段目で、鳩が一羽とてもゆっくり歩いていて、人を見ても避けなかった。彼女はその横を通り過ぎ、鳩も飛ばなかった。

左足はサテンのトウシューズで、濡れた石を踏んでも音がしなかった。右足は履き古したスニーカーで、赤いテープを一筋踏みにじり、鈍い音を一つ立てた。白い羽片の硬い襟が彼女のうなじに立っていた。一層また一層、下へは押されなかった。ふくらはぎの内側、ズボンの裾の下に、ごく細い光の紋が一本あり、肌に沿って下へ走り、テープの縁まで来て、止まった。

九段目には人がいなかった。テープもなかった。彼女はそこを通り過ぎ、止まらなかった。

鉄の手すりに上着が一枚掛かっていた。彼女のものではなく、昨日からそこにあった。今はその片袖がテープに巻かれ、袖口がねじれて一本になっていた。

いちばん下の三段に、あの踊り手が立っていた。両手は身体の脇に垂れ、指の節が少し白くなっていた。段ボールはまだ彼女の足の前に敷かれていて、跡が四つ。膝が二つ、掌が二つ。段ボールの一枚は角がめくれ上がり、テープの縁に押さえられていた。跡の中には水が少し溜まっていた。水は澄んでいて、空を映していた。水の中の円は小さな一片しか映っておらず、縁に淡い紫が一巡りあり、黒い口はその下に、細く一筋あった。

テープは段ボールの縁から溢れてきて、彼女の右足に巻きついていた。右足は九巻き、左足は五巻き。彼女の目は石畳を見ていた。睫毛はとても短く、一本が反り返っていたが、押さえはしなかった。

灰色の上着の男がテープの向こう側に立っていた。証明書を胸に留め、マスを外に向けていた。マスの中は空だった。クリップは銀色で、縁に引っかき傷が一本あった。革靴はぴかぴかに磨かれ、靴先に霧の水が少し落ちていた。彼は彼女を見ず、見ていたのはあの光だった。手はまだ開いたままで、下ろしていなかった。

スワンはしゃがんだ。彼女は先にあの光を見はしなかった。テープの縁を一か所探し当て、親指と人差し指でそれを分け、そこから裂け目を一つ作った。テープはとても幅が広く、裂くとき少し粘る音がした。彼女は一巻きずつ外へ剥がしていき、ずっと数えていた。

踊り手の右足まで裂いてきたとき、彼女はその靴の靴先に穴が一つあることに気づいた。彼女自身の右の靴と同じだった。穴は黒く、縁から白い糸がめくれ出ていた。穴から紙の角が一つのぞいていた。灰色がかった白で、四つに折ってあった。紙の字は折り目の内側にあり、彼女には見えなかった。

右の靴の靴紐は左足より一巻き多く、足の甲を回って、足首の上で結んであった。

彼女はこの巻き方を知っていた。十七歳のときから、彼女もこう巻いていた。

その右足は石畳の上に立っていて、つま先が左足より先に地面に触れていた。ほんのわずか、早かった。彼女は一目見た。何も言わなかった。

いちばん下の段の外側で、カフェのシャッターが半分下りていた。シャッターにテープはなかった。中の灯りは白かった。入口のあの椅子はコンセントに半歩近づいていて、椅子はもう戻されていなかった。入口の空気には焦げたコーヒーの匂いがあった。薄く、ひとしきりずつドアの隙間から出てきては、また霧に押し戻された。

コンセントの横の段に、紙コップが一つ置いてあった。コップの口からはまだ湯気が立っていて、湯気は上へ上がり、霧の中へ入ると見えなくなった。誰も取らなかった。

スピーカーはいちばん下の段に、石にもたせかけて置いてあった。スピーカーの振動板には裂け目が一本あり、縁にはまだ埃がついていなかった。取っ手にはベージュのテープが一巻き、三周巻いてあり、一周ごとに前の一周の半分を押さえていた。そのテープに赤はなかった。

入口の中から手が一本伸びてきて、シャッターをもう少し下ろした。前腕に、とても古い白い火傷の跡が一本あり、もう平らになっていた。手が引っ込むと、隙間には白い光が一筋残るだけだった。

彼女はそこでようやく目を上げた。

鉄の手すりのテープには、一か所巻ききれていない所があり、切れ目が一つ残っていた。ちょうど人一人が身体を横にして通れるくらいだった。

彼女はその切れ目からまたいで入った。左足のトウシューズが先に入り、音はしなかった。右足の古いスニーカーが後から入り、テープの縁をこすって、鈍く一度鳴った。

彼女は靴先に目を落とした。左足の靴先に少し赤がついていた。テープの粉だった。粉はとても細かく、吹いても落ちず、ひとりでに落ちるのを待つしかなかった。

彼女は一度振り返った。あの踊り手はまだいちばん下の三段に立っていた。左足のテープは一巻きも動いておらず、五巻きのまま、足首に巻きついていた。右足は自由になり、足の指が一度動いて、また止まった。彼女の背後のあの切れ目は、もう別のテープで塞がれていた。そのテープ越しに、外のものははっきり見えた。ただ、どれも縁に少しずつ赤がついていた。灰色の上着の男、石段の鳩、カフェのドアの隙間のあの一筋の白い光。その光が紙コップの湯気に落ち、ごく細い白い筋を照らし出していた。

鉄の手すりの内側の空気は、入れ替えられたかのようだった。

外の霧は湿っていて、顔に貼りついた。ここの空気は乾いていて、貼りつかず、吸い込むととても冷たかった。川の生臭さもなく、テープの匂いもなかった。靴底が下りると、音はとても乾いていて、少しも外へ散っていかなかった。

石段は寄木模様の敷石に裏返った。一枚また一枚、模様は左右対称で、どの一枚も縁がとても丸く磨かれていた。模様には白いものもあれば、ごく濃い灰色のものもあり、濃い灰色の数枚は冷たかった。継ぎ目には薄く埃が溜まっていて、靴底でひと撫ですると消えた。石段がなくなり、彼女はもう段を数えなくてよかった。展示室が彼女の周りに生えてきた。壁は白く、上へ白の中に没して、頂は見えなかった。天井には灯りが一列並び、笠は白く、縁が一巡り見えるだけだった。壁際の灯りが一つずつ灯り、細い光が笠から落ちてきて、展示品だけを照らし、人は照らさなかった。灯りは音を立てなかった。

九つ目の灯りが空の展示ケースを一つ照らしていた。ケースの中には白い布が敷かれ、布の上には何もなかった。

彼女は左へ三歩ずれた。灯りはついてこなかった。彼女を照らす一つは、消えていた。

自分の足から展示室の中央まで数えると、あいだに寄木の敷石が十四枚あった。模様は十字で、十字の中心はどの一枚でも正中にあり、どの中心にも濃い色の小さな点が一つあった。三枚目の中心の点はへこんでいて、中に埃が一粒あった。

彼女は展示室の中のものを数えた。彫像、一体。空の額縁、十一。幅は三種類。観客席、六列、一列に十二脚。展示ケース、三つ、うち一つは空。灯り、三十二、点いているのは二十。床のラベル、六枚、どれも白紙。出口、一つ。彼女が入ってきたあの切れ目で、切れ目はもう塞がれていた。

赤いテープに縛られた彫像が台座の上にあり、身体の布は光に照らされて襞を見せていた。テープに押さえられた襞は平らに潰され、白い跡だけが残っていた。細い光がその顔の上で一度止まった。ごく短く止まり、それから離れて、台座の字を照らしにいった。字は刻まれたもので、刻み跡の中に埃があり、光が差し込むと、埃が光って一本の線になった。彫像の顔は扉のほうを向いていて、扉は閉まっていた。

空の額縁が壁に掛かった。額の中はやはり白く、額縁の赤いテープが光を返し、上の縁から下の縁まで巻いていた。そのうち一つの額の縁には小さな穴が四つあった。掛け釘の跡で、四つの穴はどれも同じ高さにあった。

観客席の椅子はきちんと並び、どれも空いていた。椅子の脚は鉄で、寄木の敷石に下りても音がしなかった。どの椅子の背にも赤いテープが巻かれていて、巻いた高さは同じ、どれも肩の位置だった。

壁には名前が刻まれていた。字は冷たい金色だった。字の大きさは同じで、行の間隔も同じ幅だった。いちばん上の一列の字はほかより一段薄く、彼女にはそれが誰の名前か見えなかった。一面を数えた。十八。残りの三面は、もう数えなかった。

展示室の扉は二枚あり、どちらも鉄で、どちらも取っ手がなかった。扉のガラスは白く、何も映らなかった。展示室の中央には柱が四本あり、白く、字はなかった。壁際には白い幅木が一本通っていて、一区切りごとの継ぎ目は揃い、一区切りもずれていなかった。

展示室の奥で、瑰麗院士がある見得の姿勢のまま固まっていた。彼は顎を上げていて、塵さえ止まっていた。

彼のかつらは骨のように白く、左に六巻き、右に六巻き。どの巻きにも真っ赤な官僚のテープがびっしり巻かれ、耳の後ろまで巻かれて、巻き数は同じだった。顔はかつらの影の中にあり、白い一塊で、その白の上に何があるのか、彼女には見えなかった。身体は石材を継ぎ合わせたもので、石の継ぎ目から冷たい金色の葉がのぞいていた。身体には何本かの亀裂があり、遠くから見ると細い白い線で、大きくなりもせず、閉じもしなかった。右手は胸の前まで上がり、指を揃え、指先を上に向け、手首はまっすぐだった。左手は杖を握り、杖身を左肩にもたせかけていた。身体はとてもまっすぐで、曲がっている所は一つもなかった。靴は石材で、つま先は四角かった。

杖の先端は半分開いた書物で、書物も冷たい金色の葉でできていて、半分開いたまま、もう閉じられなかった。どの葉にも小さな番号が一つあり、ページの縁の一枚だけに番号がなかった。彼は立っていて、胸は動かなかった。両足は揃えられ、つま先は前を向き、一度もずれていなかった。

細い光は彼を照らしていなかった。彼は暗い側に立っていて、展示室の中央からわずか二歩だった。

彼が一歩、前へ下ろした。石材に包まれた踵が寄木の敷石を打ち、石くずが一巡り落ちた。石くずは転がり出て、中央の一枚の縁で止まった。石くずは冷たかった。彼女は拾いにいかなかった。

彼の歩みはとても整っていて、一歩ごとに同じ長さだった。彼女が二歩目まで数えたとき、彼はもう展示室の中央に立っていた。

彼女の呼吸が数えていた。三拍で吸い、五拍で吐く。

杖が軽く一度突かれた。制御の波紋が一筋押し出され、通り過ぎた所では、どの展示品も新たに一筋きつく縛り直された。寄木の敷石の継ぎ目が一本ずつ一度光り、また暗くなった。波紋の通った所では、空気にごく薄い埃が一層浮かび、埃は落ちてきて、敷石の上に止まった。彫像の赤いテープが締まり、同じ音を立てた。空の額縁の縁も締まった。一つ、また一つ、同じ音の高さで。観客席の椅子の背では、赤いテープがもう一筋巻き締まり、椅子は動かなかった。

波紋が彼女の足の前まで押し寄せた。

波紋がトウシューズに触れても、サテンは皺にならなかった。右足のスニーカーに触れると、靴の胴の洗っても落ちない汚れがまず一度光り、また暗くなった。ふくらはぎの内側の光の紋も一度光り、また暗くなった。

左手首の平たい環が半分ほど開いた。真珠色の白い鱗が波紋に触れ、一枚ずつ裏へ返っていき、三枚目まで返ったところで、止まった。環の縁がカーディガンの袖口に触れ、一度だけ鳴った。

波紋に触れられた羽片の一枚が少し押し下げられ、また立ち戻った。

重心が少し後ろへ押されたが、足はずらさなかった。硬い襟の下の肩の線は張りつめ、崩れなかった。

彼女はとても長く息を吐いた。肋骨が一本ずつ元へ下りるほど長く、重心がそれにつれて下り、右足へ下りた。右足の古い靴がまず踏みしめ、それから左足のトウシューズが落ち着いた。

波紋は引いていった。寄木の敷石の継ぎ目が一本ずつ暗くなり、最後の一本は彼女の足に寄り添う一本だった。

彼女はまっすぐに立った。話すとき顎はほとんど動かず、一字ごとの歯擦音はとてもきれいだった。

「また、踊らせてくれない建物。」

彼の声には反響がなかった。一字一字が落ちるべき位置に落ち、彼女の耳もとで言い終わると、消えた。

「文化とは、われわれが定義するものだ。」

彼女は受けなかった。壁の名前を一目見て、また彼のかつらを一目見た。まず左の六巻きを数え、それから右の六巻きを数えた。

彼女の稽古用のカーディガンは、左の袖口が一区切り短かった。自分で切ったものだった。切り落とした一区切りは劇場の入口の階段に残してきて、取りには戻らなかった。

院士はまた前へ歩いた。一歩で一枚を踏み、一歩ごとに十字の中心に落ち、九枚の敷石を歩き過ぎた。今度は、石くずは落ちなかった。彼は五枚目の敷石の正中で止まり、踵は前の一歩一歩と寸分違わなかった。

彼女の手は身体の脇で開いていた。五本の指を平らに伸ばし、指先はわずかに垂れていた。この手は十歳で教え込まれたものだった。親指の付け根のたこの裂け目はもうかさぶたになっていて、かさぶたの縁は反り返っていたが、彼女は触れなかった。

彼女は心の中で拍子を数えた。一、二、三。指が太ももの外側を軽く三度叩いた。三拍目に左足をどこへ落とすか、彼女はもう計算し終えていた。

右足がほんのわずか早い。それは彼女のものだった。左足が半拍遅い。それも彼女のものだった。二つの靴のあいだのこの半拍は、彼女自身が残したものだった。

左足のトウシューズは、リボンを交差させてふくらはぎまで巻き、結び目は彼女が自分で結んだもので、形は平らだった。リボンの縁はもう毛羽立っていたが、彼女は切らなかった。

院士の視線は彼女の上に落ちていなかった。彼が見ていたのは壁のあの一列の空の額縁だった。

「趣味とは、われわれが裁定するものだ。」

彼女もあの空の額縁を一目見た。額の中には何もなく、額の後ろの壁は白く、壁に釘の跡はなかった。額の縁の四つの小さな穴は、どれも同じ高さにあった。額の縁は薄く、爪で白いペンキを少し削り取れそうだった。彼女は削らなかった。額の掛け釘は鉄で、釘の頭に横溝が一本あった。どの釘の頭にもあった。

彼女は額の幅を数えた。いちばん狭い種類は、ちょうど彼女の掌の幅だった。いちばん広い一つは、彼女が開いた両手よりもう一区切り広かった。額と額のあいだの距離は、どの二つも同じだった。

彼女は左足を一寸後ろへ引き、踵を上げ、また下ろした。寄木の敷石の同じ一点に下ろした。

院士が杖を持ち上げ、杖の先を彼女の右足へ向けた。彼はろくに見もせず、ただ指した。

彼女の右足はあの古いスニーカーだった。靴先の穴はまだあり、あの灰色がかった白い紙の角が外にのぞいていた。

彼女は言った。「この靴は、替えない。」

平らに言った。歯擦音はとてもきれいで、一字も引き延ばさなかった。

言い終えると、言葉はそこに止まった。院士はこの一言を受けなかった。杖は宙で止まった。その間はとても短く、子音一つ分の長さしかなかった。それから杖の先は右足のほうからゆっくり移ってきて、左足のトウシューズの前まで来て、寄木の敷石に押し当てられた。

彼は杖の先を右足の方向へ引いていった。線を引くとき、目は前方の壁を見ていた。敷石に浅い溝が一本残った。溝の深さは爪一枚ほどで、縁はとても整っていた。刻んでから踏みならしたようだった。溝にはすぐに白い埃が一層溜まった。

彼女の右足が一ミリ前へずれた。この一ミリは、早かった。

彼女はその線を踏み越えなかった。左足のトウシューズも動かなかった。右手は身体の脇で五本の指を開き、また閉じ、指先が太ももの外側に触れたが、押しつけはしなかった。

彼女は線を見下ろさなかった。見ていたのは彼の手だった。その手は杖を握り、動かなかった。

線は右足の靴の胴の外側で止まっていた。二つの靴は一揃いではなく、線はそのあいだに引かれていた。線の脇には石くずが小さな坂になって積もり、坂の片側は乾いていた。

杖の先が引き戻されるとき、溝の縁の白い埃が少し落ち、彼女の右の靴の靴先に落ちて、あの穴の縁に止まった。あの紙の角は白い埃に引きずられ、穴から滑り出て、敷石の継ぎ目に落ちた。彼の踵は動かず、石くずも落ちなかった。

線の長さは二十二センチで、左足のトウシューズとほぼ同じ長さだった。彼女は目で測っていた。手を広げた幅で、一つ半。一つ半とは、右手を開いて親指の先から中指の先まで、それに指を半本足した長さだ。

彼は杖を身体の脇へ戻した。杖は左手の側に立てられ、杖の先は床から一寸離れていた。ページの縁の番号のないあの一枚が、まっすぐ彼女に向いていた。彼女の左足は動かなかった。右足の靴紐はまだ足首の上に巻かれていて、ゆるんでいなかった。

彼の視線が初めてあの線から上がり、彼女の顔に落ちた。

「お前にはふさわしくない。」

彼は平らに読み上げた。子音を一つ残らず噛みしめ、審査の所見を読み上げるように、判定を下した。