第四部・お前にはふさわしくない
第23章台座は立つためにある
台子是用来站上去的
中国語の原文からの翻訳です。

最初のアラベスクが立ったところだった。上げた後ろ脚はまだ伸びきるまで少し足りず、杖の先端の半分開いた書物が、一葉めくれた。
冷たい金色の葉が落ち、ごく薄い音を一つ立てた。後ろ脚は宙で止まり、腰はまだ力を込めていたが、その一葉はもう平らに押さえられていた。彼女の身体の何か一つが、判じられて外へ出された。
「お前の動きには出典がない。無効と判ずる。」
彼の声は高くなかった。子音はどれも噛みしめられ、一つも欠けていなかった。字が落ちてきたとき、彼女の後ろ脚はもう床へ押し戻されていた。
彼女は構えを解かず、グラン・ジュテに替えた。着地する前に、杖がまた一葉めくれた。フェッテに替え、半分まわったところで、また一葉めくれた。一ページめくれるたびに同じ音がした。薄く、短く、彼女には数えられた。二度数えた。一、二。一ページめくれるたびに、彼女の身体から使える言語が一つ減った。彼女は止まらず、拍子を数え、三拍目まで数えたところで、拍子は途切れ、ページの音だけが残った。劇場の稽古場でも、先生はこう数えていた。三拍目まで数えて止め、その一拍は自分でつなげさせた。
判定のたびに、ごく細い光が一筋天井から落ちてきて、彼女の動きの上に落ち、一度止まって、消えた。光が消えるのを待ってはじめて、今の一つが数に入るかどうかが分かった。待つあいだ、身体はまだ宙に浮いていて、腕はもう戻せなかった。
彼女はいちばん小さな動きを試した。左足のつま先を床から一寸だけ上げた。判定の光は灯らなかった。もう一寸上げても、光は灯らなかった。それは彼女に続いた動きを与えず、許された一寸だけを与えた。
三度目の着地で、膝が先に敷石にぶつかった。敷石に手をついて起き上がろうとし、掌を押しつけると、掌の下の敷石は冷たかった。乾いた冷たさで、湿り気は少しもなかった。彼女は敷石の上に膝をついて座り、脚を身体の下に折り、右足の古い靴を敷石に貼りつけ、左足のトウシューズのつま先を外へ向けていた。
左足のトウシューズが前へ踏み出し、敷石の上のあの浅い溝を越えにかかった。溝の縁はとても揃っていて、杖の先で引かれたもので、溝の底には白い埃が一層溜まっていた。
「焦るな。規則は壁ではない。一本の線にすぎない。」
今度は彼は杖を上げず、一言言っただけだった。彼女の左足は溝の縁で止まり、越えなかった。彼女は溝の底の白い埃を見た。埃は細かく、吹けば舞い上がるだろう。彼女は吹かなかった。
赤いテープが四方の展示品からほどけ、巻きついてきた。最初に巻きついたのは右足の古いスニーカーの靴紐だった。あの巻き方、足の甲を回って足首の上で結んだもの。テープが一巻きずつ重なり、結び目まで押さえ込んだ。それから足首へ、ふくらはぎへと締め上がった。最後は左足で、トウシューズのリボンもろとも床に貼りつけられた。テープは均一で、ひやりとしていて、温度がなかった。肌に貼りついたとき、肌にはただ粘りがあるだけで、ほかには何もなかった。
展示室に風はなかった。空気は乾いていて、吸い込んでも貼りつかず、匂いもなかった。展示室は大きくなりつづけた。寄木の敷石が一枚また一枚と四方の壁へ敷き広げられ、どの一枚も縁がとても丸く磨かれていた。四方の壁は展示品で埋まった。彫像、空の額縁、一列また一列。頭上から額縁が一列吊り下がり、どの額にもテープが縛りつけてあった。観客席は六列で、椅子の背には同じ赤が巻かれ、巻いた高さはどれも肩の位置だった。床のラベルは六枚、どれも白紙。灯りは三十二、点いているのは二十。細い光の束が笠から落ちてきて、展示品だけを照らし、人は照らさなかった。
彼は暗い側に立っていた。寄木の敷石の十字が彼の足もとで一枡ずつ並び、彼は一歩ごとに十字の中心に足を落とした。彼女は数えたことがある。自分の足もとから展示室の中央まで、敷石十四枚。彼は近づきもせず、退きもしなかった。
彼女の右手が上がった。指先がいちばん近い額縁まであと半メートルある所で、判定の光が先に灯った。
規則が壁から落ちてきて、一巡りまた一巡りの赤いテープに印刷された。いかなる攻撃も、文化財を損傷してはならない。
彼女の手はまだ宙に浮いていた。この部屋では、手を一度振ることさえ罪になった。
「ここにあるものは、どれもお前より価値がある。だから、お前は動いてはならない。」
彼女は動かなかった。手を下ろすと、判定の光は消えた。
彼女はうなだれていた。敷石の継ぎ目に紙が一枚挟まっていた。
手を伸ばして、それをほじり出した。紙は踏まれていて、片側が潰れ、紙面には靴底の跡が一つあった。縁はとても揃っていて、誰の靴かは分からなかった。真ん中に古い折り目が二本あり、二つ折りを二度した跡だった。紙はとても薄く、繊維は乱れていて、一本も折り目に沿っていなかった。縁は柔らかく、靴の中に長くいたような柔らかさだった。一辺は曲がっていて、何かに押されて弧が一本ついていた。その弧は中敷きの弧だった。
紙を裏返した。裏は白紙で、字はなく、ごく浅い押し跡が一列あるだけだった。タイプのとき機械の針が押した跡だった。彼女は紙を表に戻した。
紙の右下の角に四角い印が一つあった。赤く、しっかりと押されていて、四隅まで埋まり、かすれた所は一つもなかった。印の中に字はなかった。親指で一度押すと、印の盛り上がりが指の腹に当たった。三度押して、ようやく平らになった。
彼女は知っていた。
指先はまだ印の上にあった。これは不採用通知だった。番号が一つあるだけで、最後の一桁は誰かが爪で削っていて、削り跡は白かった。理由は書いていなかった。理由は面と向かって言われた。言った人は手にペンを持っていて、顔を上げなかった。
二十歳の年、彼女は劇場の裏口の窓口で、これとそっくり同じものを一枚受け取ったことがあった。窓口の中の人もこうだった。手にペンを持ち、顔を上げなかった。受け取って、最後まで読まずに階段へ出て、それを二つ折りに二度折った。あのころ、彼女の稽古用のカーディガンはまだ袖がそろっていた。階段には水売りの屋台車が一台あって、車の上の氷が溶け、水が車輪を伝って流れ落ちていた。その日は雨で、靴が濡れたが、替えずに、そのまま履いて歩いて帰った。
この一枚は、彼女が自分で二度折って、右の靴の靴先の穴に押し込んだものだった。穴は大きくなく、縁は毛羽立っていた。紙はちょうど穴の口をふさいでいて、歩くとき、紙の縁が足の指をこすった。誰にも話したことはなかった。
彼女は右の靴に目を落とした。靴先の穴は空で、中には埃が少し残っているだけだった。足の指が一度動いて、穴の縁に触れ、縁の毛羽が立ち、また倒れた。
穴は今、空だった。さっき杖の先が引き戻されたとき、溝の縁の白い埃が彼女の靴先に落ち、穴の縁に止まった。紙はそのとき穴から滑り出て、継ぎ目に落ちたのだった。
彼女は紙を少しずつ撫でて平らにした。左手は敷石について、掌の冷たさが手首までずっとしみ通った。この靴は六年履いていた。表のメッシュは汗に擦られて光っていて、光っている所は白かった。右の靴の靴底は一度張り替えていた。修理屋の人に、甲も一緒に替えるかと訊かれ、彼女は替えないと言った。
バッグはまだ肩に掛かっていた。バッグのいちばん奥の層に、彼女は紙を何枚か入れていた。同じ大きさで、同じ折り方で、一枚が一枚に重なっていた。いちばん下の一枚は二十歳の年のもので、二度と取り出して見たことはなかった。この一枚はあとのもので、何枚目かは数えたことがなかった。
同じ赤い印。彼女のバッグにもあり、テープにもあった。いくつかおきに一つ。あの踊り手の靴の中のあの角には、印は見えなかった。あの角は内側に折られていて、灰色がかった白い縁が一筋のぞいているだけだった。彼女は九段目の下で言ったあの一言を思い出した。右足についての一言。紙は同じ紙で、折り方も同じだった。あの角の下にあるのも、この印だった。
彼は五歩先に立っていた。石材の踵は寄木の敷石を押さえ、それ以上前へは出なかった。彼の視線は壁のあの一列の空の額縁に落ちていて、彼女の顔には落ちなかった。
彼女は紙を掲げ、表を彼に向けた。
「この紙……わたしも、そっくり同じものを受け取ったことがある。」
劇場ではない。地下鉄の通路だった。
乗り換えの通路で、とても長かった。タイルは白く、目地は灰色だった。通路の天井には蛍光灯が一本また一本と並んでいて、一本がとてもゆっくり点滅していた。点滅する所では、床タイルの照り返しもそれにつれて一拍遅れた。速く歩く人の足音は壁に残り、一度引きずってから散った。通路の真ん中でタイルが一枚割れていて、割れ目は黒い接着剤で埋めてあり、平らに埋めてあった。十七歳の年、彼女はちょうどその埋められたタイルの横に立って踊っていた。あのころ、髪を一つのまげに結い、鉛筆を一本まげに挿していた。芯を下に向けて。踊っても、まげは崩れず、鉛筆も落ちなかった。通路の突き当たりに壁があり、壁には古い路線図が一枚貼ってあった。どの駅にも小さな赤い点があり、赤い点は指で押されて、もう白っぽくなっていた。
雨のない午後だった。彼女は出口の方角から歩いてきた。リュックを背負い、スピーカーをベルトで肩から斜めに提げていた。ベルトが鎖骨に食い込み、白い跡が一本ついていた。ホームのほうから吹き上げてくる風は冷たく、線路の匂いがした。鉄錆に埃が混じった匂い。
背負ってきたスピーカーは古く、塗装が剥げていて、取っ手はテープで巻いてあった。彼女はスピーカーをベンチの脚もとに置いた。スピーカーには下地のノイズが一層あり、ぶうんと鳴って、ずっと止まなかった。音楽はノイズの中から出てきて、片側に寄っていた。音量を三つ目の目盛りまで上げ、それ以上は上げなかった。あのころ足に履いていたのは別の靴で、靴紐はふつうの結び方だった。
ベンチには電車を待つ人が三人座っていた。
ドアに近いほうは老婦人で、膝に籐編みのかごを一つ載せていた。かごの取っ手は木で、彼女の指がその上を押さえ、一度、一度と、スピーカーに合わせて拍子を取っていた。拍子はとても正確で、ただスピーカーより半拍遅かった。かごの中には半分皮をむいた梨が一つあり、皮はかごの縁に垂れて、ずっと切れていなかった。
真ん中は男で、折りたたんだ新聞を一部手にしていた。革靴は磨いてあり、靴先は彼女のほうを向いていた。新聞は一ページもめくられなかった。
壁際は若い男だった。とても低く座り、右足を左膝に載せて、靴紐を結んでいた。上着の袖口のボタンが一つ外れていた。靴紐を足の甲まで巻き、もう一巻き、足の甲を回して、足首の上で結んだ。とてもゆっくり巻き、一巻きごとに引き締めてから、次の一巻きに移った。靴紐は白く、結び終えると、靴先は彼女のほうを向いていた。濃い色のズボンで、膝の所が擦れて一か所白くなっていた。巻き終えても彼は立ち上がらず、右手の指を二本膝に載せて、拍子を取り始めた。取っていたのは、彼女の拍子だった。
彼女は出典のない踊りを一つ踊った。誰に踊れと言われたのでもなく、誰がそれに印を押したこともなかった。踊る前、右足の靴先で床を三度突いた。一度ごとに、まず靴先の音が聞こえ、それから床タイルの音が聞こえた。床タイルには埃が一層あり、靴底でひと撫ですると消えた。背後は壁で、壁が足音を押し返してきて、彼女より半拍遅かった。最初の八拍、手が胸の前から開き、指先が先に出ていく。二つ目の八拍、つま先が床を突き、また下りる。三つ目の八拍、身体を回し、床の自分の影を一目見て、また回り戻る。四つ目の八拍、右足の着地がほんのわずか早かった。そのわずかは彼女自身のものだった。電車は数えず、拍子だけを数えた。
通路では人が彼女の横を通り過ぎていった。スピーカーを一目見て、また彼女を一目見て、止まらない人もいた。
四つ目の八拍まで踊ったとき、壁際のあの若い男が顔を上げた。
彼は彼女を三拍見た。顔を見たのではなかった。見ていたのは彼女の足だった。拍子の上に落ちる一方の足、そしてもう一方。
三拍目が落ちたとき、床タイルの深い所で鈍い響きが起こった。風が先に来た。通路に先に風が一陣起こり、新聞の一角を吹き上げ、また押さえつけた。新聞はやはりめくられなかった。電車が来た。その響きが白いタイルを伝ってきて、三人が同時に一度顔を上げた。車両の灯りは白く、一列また一列、通路の向こう端から走ってきた。
若い男は立ち上がった。鞄のベルトを肩に掛け、振り返らず、改札のほうへ走った。改札機が一度、一度と鳴り、そのたびに誰かがカードをかざして通った。彼の背中が改札のあいだで一度ちらりと見え、そのままあの電車に飛び乗った。ドアが彼の背後で閉まった。ガラス越しに、彼の背中が一度止まり、後ろの車両に隠れた。ドアのガラスには手の跡がいくつもついていた。ほかの人が残したもので、一つまた一つと並び、どれも大きくなかった。
彼女は止まらなかった。その一曲を踊りきった。
誰も拍手しなかった。老婦人の指は一度止まり、また拍子を取り始めた。男はやはり新聞をめくらなかった。
踊り終えると、彼女はベンチに腰を下ろした。そのまま座っていて、次の電車がホームに入り、ドアが開いてまた閉まってから、ようやく立ち上がった。スピーカーのスイッチを切り、コードを巻き、肩に掛けた。
彼女は自分の靴に目を落とした。右足の靴紐は、一巻き、また一巻きと足の甲を回って、足首の上で結ばれていた。あの日から、彼女はこう結ぶようになった。
「わたしのいちばんいい踊りは、三人しか見ていなかった。三人は電車を待っていた。」
彼に向かって言った。声は大きくなく、一字一字が床に落ちた。
彼は受けなかった。杖は上がらず、判定の光も灯らなかった。視線はまだあの一列の空の額縁にあり、動かなかった。踵は動かず、石材のつま先は彼女の方向を向いて、一度もずれていなかった。杖は身体の脇に立てられ、ページの縁の番号のないあの一枚が、まっすぐ彼女に向いていた。
左手首の平たい環が回り始めた。真珠色の白い鱗が一枚ずつ翻り出て、袖口に触れ、止まり、また翻っていった。環が回った所では、袖口の糸が一本細く引き出され、細い糸はすぐにまた縮んで戻った。
彼女は縛られた足を見下ろした。ほどきにはいかなかった。右足の靴紐はまだテープの中にあり、靴先は外にのぞいていて、穴は空だった。彼女は紙を二度折り、右の靴の穴に押し戻した。紙の縁が穴の口をふさいだ。ちょうどだった。
それから、重心をあの古いスニーカーに乗せた。
ストリートの踊り方は、先にまっすぐ立つ必要がない。最初の動きは硬く、止めのあるものだった。靴底で床を踏みにじり、一度にじって、半回転ひねり、またにじる。靴底が敷石に落ちると、鈍い音が一つした。寄木の敷石の音より重かった。にじるたびに、靴底は敷石に埃を少し残した。埃は白く、一つまた一つと連なって斜めの線になり、斜めの線はあの浅い溝の縁で途切れた。テープは彼女の回転の速さに張りつめ、さらに張りつめた。
判定の光がまた一度灯った。今度は彼女の足首に灯った。彼女は止まらなかった。光の灯った回数を数えた。三度目に灯ったとき、光は彼女の動きより半拍遅れた。テープが回転の速さに引かれて裂け目を一本開き、光はその裂け目から落ちて、消えた。杖もページをめくらなかった。その一度、ページはただそこに止まって、動かなかった。
「よく見て。これは演技じゃない。」
この一言を言ったとき、彼女はもう二回転目に入っていた。足首のテープは限界まで張りつめ、ごく細い音を一つ立てて、二筋切れた。切れ口はとても揃っていた。二巻きがゆるみ、ふくらはぎに垂れて、揺れていた。彼女はどの動きも、一つも隠さなかった。
三拍で吸い、五拍で吐く。長く吐くとき、重心を右足の古い靴に残し、床から離さなかった。肋骨が一本ずつ下りていき、底まで下りて、また一本ずつ持ち上がった。三回転目に入ったとき、観客席の三列目、七つ目の椅子に白い埃が少し落ちているのが見えた。肩の線はまだ保たれていた。羽片は白く、一層また一層とうなじに立ち、回るときは一緒に回り、下へは押されなかった。左足のリボンはまだ床に貼りついていた。
左足のトウシューズは床に貼りつけられていた。つま先を突き下ろし、力を込めて引くと、リボンが床から切れ、一区切り切れた。その一引きを借りて、身体が上へ向かった。
バレエの跳躍は、つま先から始まる。足の甲を底まで伸ばし、一本のまっすぐな線にした。右足の古い靴はまだ床をにじっていて、左足が床を離れた瞬間、全身が引き伸ばされた。着地点は展示台の縁だった。
それは低い台だった。彫像は台の反対の端に立ち、布をまとっていて、布の襞は七本あった。その手は胸の前に置かれ、指の節は石で、掌を下に向け、何かを押さえているようで、何も押さえていなかった。彫像の顔は扉のほうを向いていた。扉は二枚の鉄の扉で、どちらも取っ手がなかった。台は石で、床より一段高く、角は丸く磨かれていた。台の面には一巡りまた一巡りと浅い跡があり、長い年月の足が磨いたもので、一巡りごとに前の一巡りより浅かった。台座の一角に字が刻まれていて、前のほうはテープに押さえられ、見えているのは最後の二文字だけだった。出典。台の前には、白紙のラベルが六枚一列に並び、字はなく、誰も見に行かなかった。
つま先が先に落ち、台の縁に触れた。縁で一度伸び上がった。この石が硬いかどうか試すように。それから足全体で石の面を押さえた。古い靴が石の面に灰色がかった白い跡を一つ残し、靴底の溝が一本一本とてもはっきりしていた。左足のリボンは床から一区切りめくれ上がり、まとまらなかった。
彼女は、上に立った。
その一瞬で、台座はもう台座ではなくなった。少し高い床にすぎず、ほかの床と何も違わなかった。足の下は平らで、支えられなければならないものは何もなかった。彼女の影が台の側面から垂れ下がり、床まで落ちていた。足を据えると、彼女は長く一息吸い、肋骨がすべて開いた。台は彼女の膝より少し高く、その上に立つと、展示室の向こう端が目の前にあった。観客席の椅子の背が一列また一列、壁の名前は冷たい金色で、一面に十八。彼女は一面を数え、十八番目まで数えて、止めた。
寄木の敷石の継ぎ目には、あの一列の石くずがまだあり、一粒一粒のあいだの距離は同じだった。石くずの脇には白い埃が一つまみあった。さっき杖の先が引き戻されたときに落ちたものだった。継ぎ目に沿って目を向けると、継ぎ目の行き着く先は彼の靴先だった。
細い光は彼女を照らさず、照らしていたのは台の向こう端の彫像だった。テープに押さえられた襞には白い跡だけが残っていて、光が白い跡に落ちると、白い跡は一度光り、また暗くなった。
「台座は、立つためにある。」
今度は彼女は声を高くしなかった。歯擦音はとてもきれいで、一字一字が彼女自身の立っている場所に落ちた。
五歩を隔てて、彼のかつらの正中で、テープの一片がゆるんで反り上がり、下の白い点を一つのぞかせていた。白い点はとても小さく、点だということしか分からなかった。
彼女は下りなかった。
展示室はとても静かだった。灯りは頭上にあり、笠の中の光は展示品にだけ落ちていた。彼女は台の上に立ち、彼を見ていた。彼は彼女を見なかった。踵は動かず、石くずも落ちなかった。
彼は手を上げてかつらを押さえた。石材の指の節がテープを押さえたが、押さえきれなかった。反り上がった一巡りの縁が一度張りつめ、それから跳ね戻り、また反り上がった。白い点はずっと外にのぞいていた。彼女はその白い点を見ていた。それは白く、点が一つあるだけで、模様はなかった。
彼の声は文の頭で一度止まった。その一度は、どの拍の上にも落ちなかった。
「……やめろ。お前に、ここに立つ資格はない。」