第六部・引き渡しの前
第34章条件付きの検収
带条件验收
中国語の原文からの翻訳です。

署名台の前で、署名者は止まり、次の条を読み上げなかった。
ホールに音はなかった。送風機の低い音はまだ石板の下にあり、少しずつ鳴っていて、この階の空気には入ってこなかった。明月(みつき)は台の一角に立ち、台の縁から掌一つぶん離れていた。右手は直刀を握り、刀に鞘はなく、切っ先は下を向き、柄の桜色の組紐が親指と人差し指のあいだに押しつけられていた。彼女は数えていなかった。台の真ん中のカードケースを見ていた。ペンが差してあり、キャップは外を向き、ペンの細い紐はゆるんでいて、誰もそれを取ろうとしなかった。
手首に時計はなかった。外の時間は、この階では数えられなかった。数えることしかできなかった。四十まで数えても、署名者はまだ止まっていた。もう一度数え、四十まで数えても、署名者はまだ止まっていた。胸のDリングは掛かっていて、胸ハーネスは胸の下で締まり、留め具は噛み合っていた。彼女はそれに触れなかった。
署名者の右手の親指はまだ台の縁の下を押さえていて、フックは台の脚の環の中にあった。環の内側の光る一周は上を向き、フックの縁はちょうどその一周の縁にかかっていた。左手が動いた。
台の面の署名者の側に、細い隙間が一本あった。ふだんは閉じていて、台のこちら側からは見えなかった。隙間が一寸開き、用紙が一枚、中から角を一つのぞかせて、止まった。左手の二本の指がその角を挟み、用紙を引き出して、台の面に平らに置いた。指はまた揃い、中指が台の縁に当たった。
用紙は白く、壁の用紙より薄かった。見出しは二字、検収。その下の欄には、階層、塔全体、と印刷されていた。さらにその下の欄は残された項目で、横線が一本印刷され、横線の上は空だった。一番下は結論で、結論欄は空、署名欄も空だった。
左手がペンを取った。ペンはカードケースから抜かれ、細い紐が一度ぴんと張って、またゆるんだ。ペン先が結論欄の最初の枠に落ちた。震えなかった。
署名者は字を書いた。ペン先はとてもゆっくり進み、音はなく、紙も鳴らなかった。一字書くと、ペン先は一度止まり、それから次の字へ進んだ。手首はまっすぐで、肘は上がらず、指だけが動いていた。書かれたのは「合格(残された項目:一件、観察)」だった。字の大きさは同じで、間隔も同じで、括弧はまっすぐで、コロンと読点は、それぞれ落ちるべき場所に落ちていた。
最後の括弧まで書くと、ペン先は一度止まった。括弧の右で止まり、下りなかった。それから下りた。括弧の外に、句点を一つ打った。
書き終えると、署名者はペンをカードケースに戻した。キャップは外を向いていた。細い紐が一度揺れて、止まった。
署名者は息を一つ吸った。
その一息が吸い込まれ、胸が一度上下した。肩は動かず、胸だけだった。ベルトがそれにつれて一度動いた。胸から台の脚のフックまでずっと動き、フックは環の口で軽く一度触れたが、鳴らなかった。吸い込み、止め、それから吐き出した。吐き出すときも、音はなかった。
肩は元の高さにあり、左右はやはり同じ高さだった。
明月の数が途切れた。あの一息が聞こえた。それは彼女自身の数の外にあった。彼女自身の呼吸も一度止まった。彼女はそれをつなごうとしなかった。左手が右手の親指をつかんだ。強くつかみ、また離した。
署名者が口を開いた。
「わたしが署名する。」
あの声はやはり平らで、一字一字が同じ高さに置かれていた。けれども「わたし」という語が出てきたとき、声はその前に覆いかぶさっていなかった。それは口の真ん中から出てきた。この語は、この声の中にこれまでなかった。
明月は動かなかった。足は元の場所にあり、台の縁から掌一つぶん離れていた。
署名者の右手の親指が台の縁の下に入った。ばねはきつく噛んでいて、親指を奥まで押し込んで、やっとフックの口が開いた。親指が押し込まれるとき、止まりもなく、カチリもなかった。フックは環から抜け出し、フックの口の縁はあの光る一周を擦ったが、音は立たなかった。フックの口が開いたその一瞬、何も鳴らなかった。フックの末端が台の脚の古い塗装を小さく一か所擦り取り、塗装の下の鉄は暗かった。
ベルトがゆるんだ。右の脇の下から回っていた部分が一寸ゆるみ、台の縁を滑って、垂れ下がり、署名者の脚のそばで一度揺れて、もう張っていなかった。そのベルトの内側には、少し色の濃い跡が一本あった。何度も回され、また戻されて残ったものだ。
今度は、明月はその人の顔を見た。
顔は明月が思っていたより少し小さかった。こめかみの髪は後ろへまとめられ、きつく結ばれて肌に沿い、ごく淡い白い跡が一本のぞいていた。ずっと前に何かが擦れたもので、もう平らに治っていた。眉は整えられておらず、平らで、一本一本がそれぞれ自分の向きを向いていた。目は黒く、灯りが差し込み、中に小さな光が一つあって、その光は動かなかった。鼻の両脇には細かな灰が一層ついていた。風に吹かれてついたもので、拭われていなかった。唇は顔より少し淡く、閉じていて、真ん中にごく細い筋が一本あった。耳はきれいで、耳たぶには何もなかった。
目が一度まばたいた。
まぶたが閉じ、また開いた。開いたあとも、目は台の面を向いていて、明月を見なかった。
署名者が台の後ろから出てきた。
明月は、署名者が台を離れるのを初めて見た。署名者の背はまっすぐで、両肩は同じ高さで、ベルトは右の脇の下から背中へ回り、背中にしわ一つ作っていなかった。署名者は三歩歩き、壁際へ、一番左の用紙の前へ行った。足は石板に落ちても音はなく、こだまもなかった。靴底が石板を離れるとき、石板の細かな灰の上にごく浅い跡が一つ残った。その人が歩いた最初の一歩だった。フックは足もとを引きずられていたが、それも音を立てなかった。ペンは、その人が台を離れるときにカードケースから持ち出したもので、ペン先が台の面を滑っていった。ペンの細い紐は十分に長く、一節ずつケースの口から後を追って出てきて、台の縁を越えて引きずられ、石板に落ち、壁際に着いてようやくぴんと張り、またゆるんだ。
署名者はペンを壁際へ持ち上げた。
壁の用紙は一枚一枚、壁の端まで並んでいた。一番左のあの一枚の、後ろの空欄は空だった。それは署名する人のために残されていた。明月が台のこちら側から見ると、その空欄はただの白い四角で、紙の色より少し濃く、何もなかった。明月は壁の用紙をもう一度数えた。二十三枚。どの一枚にも右下に黒い四角い印があり、印は乾いていた。釘の頭も二十三個。一つも欠けていなかった。
署名者は空欄に書き込んだ。条件付き完了。
字は印刷された字の後ろに書かれていて、印刷の字より淡く、紙の色より濃かった。どの画も書き終えられていた。筆を止めたところは、ほかより少し軽かった。
それから署名者は一画を落とした。その一画は軽くもなく、重くもなく、字にはならなかった。ただ署名の一画だった。あの一画を軽く落とすべきか、重く落とすべきか、明月は台の向こうで考え、思いつかなかった。ペン先が紙を離れるとき、紙には小さな点が一つ残った。黒く、縁が少し白んでいた。
署名者は振り向かなかった。ペンをまだ左手に持ったまま、壁に向かって、その一行を読み上げた。
「残された項目〇〇〇一、条件付き完了。」
声は口から出て、やはり平らだった。けれども今度は、その言葉は台の面に落ちず、足もとにもとどまらなかった。壁から戻ってきた。左の廊下から戻り、真ん中の廊下からも戻り、右の廊下からも戻ってきた。一緒に戻ってきて、署名者が言ったより少し遅く、しかも揃っていた。その言葉は戻ってくるとき、壁の用紙にぶつかり、二十三枚の紙のあいだで一度止まって、それから散った。最後の一字が、いちばん遅く戻ってきた。
署名者の声に、ホールでこだまがついた。
明月には聞こえた。彼女の数は一度止まり、それから続いた。うなじが一度こわばった。彼女はそれを緩めなかった。
台の面の細い隙間がまた開いた。さっきより広く開いた。カードが一枚、中から押し出され、台の縁で止まった。明月の真正面だった。
カードは硬く、検収書より厚かった。角はまっすぐで、角にはごく浅い擦れ跡が一本あった。カードケースの口に擦られてできたものだ。カードには一行印刷されていた。LM-1-06、引き渡し番号。その後ろに一文があった。その一文のもとの字はまだ残っていて、真ん中に細い線が一本引かれ、消されていた。消されていたのは「検収未通過、引き渡し保留。」だった。消された一文の後ろに、新しい字が印刷されていた。「引き渡し済み。」
その字は消された字より濃く刷られ、どの画もしっかり押されていた。新しい字は古い字の後ろに続き、古い字もまだ見えた。明月は一度見てから、目をそらした。
明月はカードを取り上げた。カードは冷たく、彼女の掌より少し冷たかった。カードを裏返すと、裏は白く、字はなかった。
彼女は何も言わなかった。署名者も彼女を見なかった。署名者はまだ壁際に立ち、台に背を向け、あの一行に向き合っていた。ベルトは署名者の脚のそばに垂れていて、張っていなかった。署名者の右手の親指が体の横で一度動き、また止まった。それは掛ける動作だった。フックはもう台の脚になかった。親指は環を見つけられず、そこで止まった。
明月はカードをポケットにしまった。ポケットにはもうV-06の来訪者カードが一枚あり、二枚のカードが寄り添った。どちらも硬かった。
カードに印刷されたあの一文を、彼女は誰かが言うのを聞いたことがなかった。それは印刷されたもので、口に出されたものではなかった。
エレベーターの扉は開いていた。誰もボタンを押していなかった。彼女は歩いていった。かごの灯りは白く、鋼板の壁に縦長の影が一つ映っていた。彼女のものだった。中に入り、ボタンを押さなかったが、扉はひとりでに閉まった。鋼板の継ぎ目が一本一本、下から上へ続いていた。四本数えて、数えるのをやめた。
かごは下へ動いた。六階を過ぎるとき、扉の隙間から白い細い光が一筋洩れ、すぐに過ぎた。五階を過ぎても止まらなかった。三階を過ぎても止まらなかった。パネルの数字が一つずつ暗くなり、一まで暗くなって、止まり、扉が開いた。
小ホールには誰もいなかった。壁はコンクリートで、灰色で、触るとざらついていた。壁の根元のセメントがむき出しで、色が濃いところと淡いところがあった。隅のブリキのごみ箱の縁には、紙がまだ貼ってあり、字はこうだった。エレベーター内での飲食はご遠慮ください。小ホールの南の壁に鉄の扉が一つあり、扉に字はなかった。扉に鍵はかかっておらず、一筋押し開け、彼女はその隙間から体を横にして出た。
段の下は、すぐ水だった。
段の上で、塔身が彼女の頭上から立ち上がっていた。
靄は薄れていた。七本の設備階の灯りはまだ灯っていた。それは塔身の七本の濃い色の横帯で、横帯の中の灯りは白く、塔の足もとから立ち上がるときは、一層ずつ上へ灯っていったものだ。いまはそれが一番上の一本から、一本ずつ消えていった。一本消えると一度止まり、それから次が消えた。一番下の一本まで消えたときも、一度止まった。それから七本とも暗くなった。
灯りが消えるとき、音はなかった。送風機の低い音も止まなかった。それはまだあり、地面に張りついて、ずっと遠くからやってきていた。
横帯のあいだの窓は、まだいくつか灯っていた。白く、線には並んでいなかった。塔身は夜の中で灰色だった。塔の足もとのガラス扉が一枚一枚灯り、扉の中の石板はとても平らに光っていた。
水面に白いものが一筋あった。とても低く、水に張りつき、塔の足もとの南側から明るくなっていた。そこには口が一つあり、水面からそう高くはなく、口の中の灯りは白かった。段の石の面は冷たく、細かな灰が一層あり、彼女の靴底が踏んでも音はしなかった。水辺の石段は一段一段水の中へ延び、一番下の一段は水に浸かっていた。石段の両側の地面では、石板の継ぎ目に草が少し生えていた。草は灰色で、風に押さえつけられ、先だけをのぞかせていた。
風が湖面から来て、両方の肩に吹きつけた。両肩はむき出しで、風はじかに肌を押した。彼女は身をすくめなかった。左目の下のごく淡い刻み痕が風に吹かれていた。手首の桜色の小さな結びが骨を押さえていた。
一羽の鳥が水面の上を低く飛んでいった。鳴かなかった。
ひどく大きく、動かなかったものが、動いた。
船が口から滑り出てきた。まず船首。楔形で、先端は鑿(のみ)の刃先に絞られていた。船体は白っぽい灰色で、口の縁に沿って過ぎ、触れなかった。それは一寸ずつ出てきて、半分出たところで止まり、それから全部出てきた。水面の白がゆっくり厚くなり、一面に広がって、船の影を下から支えた。
それは大きかった。塔の足もとのどの別棟よりも長かった。船はコアシャフトから出てきたのだった。シャフトは塔の真ん中にあり、底からずっと上まで通っていた。それが出てくるとき、口の縁の水は揺れず、水面には波一つ立たなかった。
船体に名前はなかった。艦橋の下に番号が一行吹きつけてあった。字は灰色で、船殻より一段濃かった。LM-1-06。
艦橋は低く、三面がガラスで、ガラスは暗く、下の水を映していた。艦橋の上には小さなドームがあり、それも暗く、光を返さなかった。背骨は中が透けた箱で、梁の隙間から白いものが少しのぞいていた。尾には平行な鰭(ひれ)が二枚立ち、後ろへ傾き、鰭の影は水面に二本の斜線を引いていた。舷側に灯りが二つ灯っていた。一つは赤、一つは緑で、どちらも点滅しなかった。
船体の中ほどに、船首から船尾まで、細い線が一本通っていた。橙色だった。一本だけで、これ以上細くはなれないほど細く、船首の鑿の刃先から始まり、尾の鰭の付け根まで、途中で一度も切れていなかった。
船腹の下に、小さな光があった。それは喉口で、ほんの少しだけ灯り、暖かかった。水面は照らさず、自分の下の小さな一か所だけを照らしていて、その小さな一か所は明るく、ほかは暗かった。
船が角度を一つ変えた。船首を岸に向け、湖面の上に止まった。水面からは高く、それでいて高すぎもしなかった。舷窓は暖かな白に灯り、片側に九つずつ一列に並び、とても平らに光っていた。それは止まり、動かなくなった。降りてもこず、飛び去りもしなかった。
船はそこに止まり、彼女の真正面にあった。あの船は彼女に引き渡された。ポケットのカードには同じ番号が印刷されていた。
明月の手はポケットの中で、カードの角に触れた。角はまっすぐだった。
明月は二歩下がり、段を一段下りた。ここからようやく、塔が丸ごと彼女の目に入った。
北東に、あの円がまだ掛かっていた。円の縁は淡い紫で、とても細く、一周しかないほど細かった。明るい面は元のままで、その上の雲は白く、ひとかたまりずつ、まだ流れていた。雲が円の縁まで流れてきて、あの淡い紫の一周の上にかぶさったが、淡い紫は色を変えなかった。雲が過ぎても、それはやはりその色だった。
円の上方、塔寄りのところに、黒い口が一つあった。口の縁には、もとは細い白い輪が一本あった。その細い白い輪が、円に近い側で一区間切れていた。切り口は揃っていて、両端はきれいに収まり、糸一本も引いていなかった。
雲が一つ黒い口の上にかぶさったとき、口の黒はそれに一度遮られた。しばらくして、また現れた。やはりあの黒だった。
円そのものは欠けていなかった。それはまだ丸かった。あの細い白い輪の一区間だけが、なくなっていた。
空に一か所、空いたところができた。
水にも小さな淡い紫が一つ映っていた。円の縁が湖面に落とした影だった。風が吹くと、それは砕け、またゆっくりと元に戻った。
彼女の視線は空から下り、塔に落ちた。
三つの翼が下で分かれ、上へ向かって真ん中のコアへ寄り集まっていた。どの翼も一層ずつ上へ後退していて、後退した段の縁はまっすぐで、一層ごとに細くなっていた。七本の設備階が塔身に横たわっていた。灯りが消えたあとは、ただ七本の少し色の濃い横帯で、どの一本も塔身の銀灰色より一段濃かった。その上が尖塔だった。尖塔の頂を、彼女は見た。
靄は散っていた。それはもともと塔身の中ほどにかかっていて、灯りが四本目の横帯まで来ると、その中に入っていった。いまはなかった。足もとから頂まで、塔身はどこも銀灰色で、上にかぶさるものは何もなかった。頂はとがっていた。とがった先の上は空だった。
湖面はまだ鉛色で、岸辺の灯りが水に落ち、いくつかの白い筋に砕けていた。
東の水面の上空に、まだ灯りが一つあった。視界の縁の外に止まっていて、船の灯りより低く、ほんの少しだけ灯り、近寄ってこなかった。それは彼女の最初の船だった。それは動かなかった。
七本の横帯を、彼女は一通り見た。数えなかった。
翌日、八時半、ソルは二号棟五階の寮に戻った。
上の段の男はまだ眠っていて、布団を頭までかぶっていた。部屋のエアコンは半分壊れていて、風は窓のところで途切れた。ベッドの頭の壁に釘が一本打たれ、釘にはあの金属の環が掛かっていた。
命綱を肩から外した。フックを金属の環に合わせ、掛けた。カチリと鳴り、噛み合った。
彼はそれを一度見た。フックはしっかり噛み合っていた。昨日は三度掛けた。今日は一度で噛み合った。彼はもう掛け直さなかった。
彼は横になった。作業着は脱がなかった。隅のエアコンの管はもう滴っておらず、管の口は乾いていた。彼は数えなかった。
十三時、彼は目を覚ました。すぐには起き上がらなかった。天井に水染みが一つあり、縁が黄ばんでいた。彼はしばらくそれを見ていた。
ベッドの脇のボトルの水位線はまだあり、一本も消されていなかった。枕の下の携帯電話は鳴らなかった。
四時二十分、彼はまた寮から作業ヤードへ歩いていった。道中に木はなく、彼は影を選んで歩かず、まっすぐ日なたを歩いた。道に散水車はなく、女の作業員が一人、空の手押し車を押して通り過ぎ、車輪が砂利の上で二度鳴った。
冷却ドラム缶のそばには誰もいなかった。缶の白い塗りがまた少しはがれ、覗いた鉄は暗かった。袖口で包んで蛇口をひねると、出てきた水はぬるく、少し鉄錆のにおいがした。彼はボトルをいっぱいに汲み、親指で口を押さえた。
彼は日除けの屋根の下へ戻った。遮光ネットが日差しを一区画ずつに切り分けていて、日はもう西に傾いていた。段はコンクリートで、三段あり、一番下の段に人はいなかった。遮光ネットの影が段に落ち、一段目を過ぎ、二段目を過ぎて、段の外のコンクリートの地面まで移った。
五時を過ぎると、夜勤の者たちがまたやってきた。何人かは二人ずつ歩いてきて、柵の内側に立った。ヘルメットを指に掛け、後ろのつばを外に向けている者もいた。爪を切っている者がいて、パチン、パチン、と小さく音がした。彼のヘルメットの後ろのつばの字は、また半分褪せていた。彼はなぞらなかった。
若い作業員の一人の靴紐がほどけ、しゃがんで一度結び直した。結び終えると、立ち上がり、もうほどかなかった。
五時二十分、工事班の職長が柵のほうから歩いてきた。手には巻尺を持ち、テープは巻き戻されていなかった。彼は窓口を一度見たが、止まらず、通り過ぎた。
五時半、工事班の小型車が一台入ってきて、冷却ドラム缶のそばに停まり、荷台から氷の袋を一つ下ろした。氷が缶の中へあけられ、ざあっと音がして、一塊ずつ浮かび上がり、缶の壁にぶつかった。夜勤に上がる者たちのために足されたものだ。この一袋は昨日のより少し小さかった。
五時四十分、彼は受付小屋の窓口へ歩いていった。現場の音が一度低くなり、また高くなった。
窓は開いていた。窓ガラスのあの亀裂は透明なテープで留められ、テープの縁がめくれ上がっていた。ドゥカが中に座っていた。手はきれいで、耳に鉛筆を挟んでいた。机の脚に記帳用のペンがつながれ、紐はゆるみ、ペン先は窓の外を向いていた。窓台の魔法瓶には蓋がされ、注ぎ口から湯気は出ていなかった。ドゥカは入場表を押し出し、窓台の端まで押し出した。
ソルは作業員証を窓口から差し入れた。ドゥカは作業員証を見なかった。指が表を下へたどっていった。一行ずつ、名前は見ず、番号だけを見ていた。
ソルはペンを取った。ペンはつながれていて、紐は彼まで届いた。入場表に空いた行を一つ見つけ、名前の欄に書いた。ソル。
番号の欄は空いていた。ここでは、彼の番号は〇四一七だった。この一枡を、彼は書かなかった。
ドゥカの鉛筆がその一枡の上で止まった。その一枡は空だった。鉛筆はそれを埋めにいかず、引っ込めもしなかった。その一枡をよけて、その行の末尾に、一度点を打った。
窓台の上に、登記簿が開かれていて、後ろのほうのページになっていた。そのページに一行の字があった。窓の外から見たことのある、あの一行だった。LM-1-06、引き渡し番号。後ろの字が変わっていた。「引き渡し」の字は読めた。それに付いているのは、短い一語だけになっていた。工事現場の掲示板には、どの棟の引き渡し日なのかが書かれていて、何度か先へ延ばされていた。この一行の後ろは「引き渡し済み」で、先へ延ばされてはいなかった。
彼はペンを、紐の届くところへ戻した。ペン先が机に触れ、コツ、と鳴った。