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第七部・高所では一人きりにならない

第37章第四条

第四条

中国語の原文からの翻訳です。

第37章 第四条

彼女は体重をそこに預け、押し下げた。

十七番の下の銀白の箱が一度鳴った。ごく短く、尾を引かなかった。箱は綱を一寸巻き戻し、親綱がそれにつれて一筋ぶん張り、彼女のフックまで張りつめた。彼女の体は動かなかった。動いたのは、その一筋の綱だけだった。

まず背中を後ろへ預け、胸骨の下のハーネスに預けた。ハーネスは新しく、硬く、押し下げると肩のほうへ少しずり上がった。彼女はそれを押し戻し、元の位置まで押し戻した。フックは十六番の環に掛かり、ゲートはしっかり噛んでいた。

十六番の柱は彼女の腰まであった。柱頂の環は丸く、彼女のフックがそこに噛んでいた。柱の根元にはボルトが四本あり、どの頭にも白いペンキが一筋引かれていた。白いペンキは無傷で、ひびもなく、縁の反りもなかった。彼女はしゃがみ込み、ボルトの根元を一目見た。錆はなかった。十五番は彼女の背後にあり、その白いペンキも無傷だった。

彼女は立ち上がり、もう一度押し下げた。箱がまた一度鳴り、また一寸巻き戻した。

彼女の押し方はゆっくりだった。まず爪先を押し込み、それから少しずつ立てていく。重心を踵から母趾球へ移し、また母趾球から踵へ押し戻す。そのたびに、自分の靴底がグレーチングの上でかすかに擦れる音が聞こえるほどゆっくりだった。底まで押し、止め、それが動かなくなるのを待って、また押す。彼女は右手を十六番の環に置き、掌を冷たい鋼に当てた。親綱は彼女のフックの横で張っていた。まっすぐに張っていた。彼女は手を綱へ移した。指の腹に、綱が震えているのが分かった。ごく細かく震え、半ばまで震えて止まった。彼女は手を引いた。指が少ししびれていた。彼女は指を開き、また握った。十六番の環を握った。

検査員のように。検査員の目はボルトを見て、人を見ない。

手すりは彼女の膝の外側にあり、銀白で、低かった。手すりの外には何もなかった。風と、遠い街の音だけがあった。風が強いと橋は揺れた。揺れ幅はごく小さく、膝にしか分からないほど小さかった。彼女の膝はそれにつれて一度曲がり、またまっすぐに戻った。彼女は外を見なかった。

左の爪先が靴の中で突っ張った。サテンの靴で、甲の折れ目は伸びていなかった。サテンの内側は冷たく、足指の下の水ぶくれがその冷たさの中でふくらんでいた。押すたびに、左の足指は靴の先へ一度突き当たり、水ぶくれに当たって、また引いた。足指に貼った一枚の絆創膏は、縁がまだめくれていた。昨日の昼、清掃員が一人、清掃カートの小さな引き出しから出して渡してくれたものだ。彼女は貼り直さなかった。右足のスニーカーは靴紐を二重に結んであり、きつかった。押すたびに、靴紐が足の甲に一度食い込んだ。彼女はそれを緩めなかった。

彼女は呼吸を数えた。吸って、三拍。押す。吐いて、五拍。

二度目に押し込んだあと、彼女の拍子が半拍遅れた。箱が鳴ったとき、彼女のその一拍はまだ落ちきっていなかった。

十七番の上の男は振り向かなかった。

彼は柱のそばに立ち、彼女に背を向け、西を向いていた。灰色の作業着で、肩の縫い目のところが擦れて色が薄くなっていた。肩は水平だった。うなじの髪は短く刈られ、何本かはもう白くなっていた。左手は体の脇に垂れ、人差し指の第二関節の色がほかの関節より濃かった。綱に擦られてできた硬い皮だ。右手は動かなかった。靴は黒く、爪先は西を向き、両足はぴたりと近く揃えられ、踵はグレーチングの同じ一本の横桟を踏んでいた。箱が二度鳴っても、彼の肩は動かず、背中も動かなかった。

三度目を押し込んだ。箱が三度目に鳴り、綱がまた一寸巻き戻された。

風が二つの塔のあいだから来て、スカイブリッジのグレーチングを一度かすかに鳴らし、止んだ。橋の中ほどには灯りが一つだけ点いていた。ちょうど十七番の真上だった。光は落ちてきて、彼の肩に落ち、足もとのグレーチングの一枡に落ちた。ほかの枡は暗かった。枡の隙間に少しだけ光があった。とても遠かった。二つの塔のあいだの闇に、とても大きな、動かないものが一つあった。彼女は二度は下を見なかった。

彼が口を開いた。肩は上がらず、うなじも動かなかった。

「第四条。点検が済んでいないから、私は行けない。」

その言葉には反響がなかった。グレーチングはそれを受け止めなかった。言い終えると、それは彼の立っている一枡の上に留まり、それ以上外へは出ていかなかった。

彼女はすぐには話さなかった。彼女は彼の肩を数えた。肩はやはり水平だった。彼女はグレーチングも数えた。彼女の足もとから十七番の足もとまで、あいだは七枡で、どの枡の隙間も同じ幅だった。彼女は二度数えた。二度とも七だった。

彼女は背筋を伸ばした。ハーネスが胸骨を押さなくなるまで伸ばした。顎はほとんど動かさず、歯音を明瞭に噛み切った。

「どうして行かないの?」

彼女の声はグレーチングに落ち、長く引き延ばされた。二つの塔のあいだの闇を渡り、下のA字脚にぶつかって、跳ね返ってきた。彼女の耳もとに戻ってきたとき、口から出したときより半拍遅れていた。

橋の上の風が止んだ。グレーチングは鳴らなくなり、親綱は震えなくなった。二つの塔のあいだには下の音だけが残った。遠く、途切れ途切れに。彼女は待った。

彼はすぐには答えなかった。箱はもう鳴らなかった。一拍おいて、彼は言った。

「いつでも行ける。」

この言葉にも反響はなかった。

それを言うとき、彼の体は半寸、後ろへ傾いた。

綱にもたれたのだ。箱は鳴らず、綱が一度張った。軽く張って、また緩んだ。その綱は十七番の下から出て、彼の左肩を回り、体の前へ向かい、斜めの線に張られて、肩のところで見えなくなっていた。彼女はそれに触れにいかなかった。

彼の踵はまだその一本の横桟を踏んでいて、動かなかった。彼の手は自分のゲートを外しにいかなかった。両手とも体の脇に垂れたままで、どちらも上がらなかった。

彼女は柱の側面の小さな札を一目見た。十七番の札は、外向きの面に「未点検」とあった。十八番は十七番の二メートル先にあり、札は外を向いて、「点検済み」とあった。二枚の札は二メートル隔たっていて、字の墨の色は同じだった。

彼女は何も言わなかった。白い羽片の硬い襟がうなじに立っていて、風はそれを動かせなかった。彼女は体重を右足から左足へ移した。水ぶくれが一度跳ね、彼女はまた体重を右足に戻した。

二年目の十一月、第三火曜日、午後三時十分。

そのとき第四条は書かれてまだ三週間だった。第四条のきっかけは、その年の秋の、臨時の検査員だった。彼は人の代わりに三日間だけ勤務に入り、三日目の午後、途中で上がった。家の用事だと言った。その日、ボルトが一本、締め切られていなかった。あとで別の人が見つけた。見つけたとき、綱はもう一目ぶん緩んでいた。誰も事故には遭わなかった。第四条はその午後のあとに書き加えられた。点検簿の第一ページ、四行目に。そのボルトは十二番にあった。その白いペンキは新しく、締まっていないボルトの頭にかぶさっていた。

その三週間、彼は毎朝橋に上がり、十七番を三度叩いて、フックを掛けた。ほかのアンカー柱を一本ずつ見ていき、十七番まで来ると、そこで止まった。その一本は、叩きもしたし見もしたが、点検済みにはできなかった。点検簿では、どの行の点検者の欄にも「程」と書かれていた。

その火曜日、橋の上には風があった。東端の点検室の窓が細く開いていて、風がその隙間から入り、壁のフック掛けに吊るされたフックどうしをぶつけ合わせた。何度か鳴って、また止んだ。グレーチングの上には薄く水が張っていて、踏むと滑った。空は灰色で、雨は降っていなかった。ただ湿っていた。塔身の上のほうは雲が押さえていて、そこまで押さえて途切れていた。

午前、彼は東端の点検室で十七番の点検を半分済ませた。自己点検の半分を、彼は点検簿に書き込んだ。未点検(自己点検は数に入らない)。書き終えても、彼はそれを線で消さなかった。字は小さく、枡の真ん中に収まり、一画一画、きちんと揃っていた。

午後、点検表を西端の当直室に忘れてきていた。午後の点検に要るので、取りに戻らなければならなかった。点検表は薄い紙一枚で、アンカー柱の枡が印刷されていて、一枡に一字を書き入れ、書き終えたら署名する。当直室は橋の向こう端にあった。十七番から西へ歩き、十八番を過ぎ、十九番を過ぎ、柱を一本ずつ数えていくと全部で十三本、端まで行くとガラス戸が一枚ある。戸の中の机にはホーローのカップが一つ置いてあり、中の水は冷めていた。前の晩に彼が注いだものだ。点検表はそのカップの下に挟んであった。

その日、彼は腰に工具袋を提げていた。帆布の袋で、洗いざらして白っぽくなり、袋の口にはスパナと綱の端切れが一巻き差してあった。彼は袋を腰から外し、十七番の柱の根元、銀白の箱の隣に置いた。

行く前に、彼は十七番の柱を三度叩いた。指の節が鋼に当たる。一度、一度、一度。一度ごとに一拍おいた。綱に掛かる前の彼の習慣で、どのアンカー柱も叩くことにしていた。叩き終えると、フックを掛け、それから動いた。

彼はフックを外さなかった。ただ一歩踏み出しただけだった。足がグレーチングに落ち、十七番から二メートル離れた。

セイフティブロックが鳴った。

その音はごく小さく、橋の上の風にもかき消されるほど小さかった。このセイフティブロックは本来、墜落を防ぐためのものだった。人が落ちたときにだけロックがかかり、ふだんは綱が出ていくに任せる。どれだけ出し、どれだけ巻き戻すかは、人しだいだった。その週、彼はそれを「巻き切り」に調整していた。調整するとき、彼はつまみを端まで回し、もう回らないところまで回して、箱の蓋を元どおりにはめ、固く閉めた。

綱が箱の中へ巻き戻された。一寸ごとに一度鳴り、彼を十七番へ引き戻した。綱には古い擦り跡が一筋あった。何度も巻き戻されてできたものだ。一寸巻き戻されるたびに、胸のフックが胸骨を押し、少し食い込んだ。彼はまっすぐ立っていられなくなった。体が前へ丸まり、柱の際まで丸まって止まった。

彼は胸のバックルに手を当て、それが緩むのを待った。

緩まなかった。

彼はもう一度試した。綱がまた巻き戻された。一寸、二寸。彼をあの一枡へ引き戻した。彼は立ち止まった。手はまだ胸のバックルに当てたままだった。

三度目は試さなかった。彼の親指がゲートの縁で一度止まり、押し込まなかった。

彼は西端へは行かず、点検表は取ってこられなかった。その日の午後、橋の上には彼一人しかいなかった。両端の扉は閉まっていた。彼は十七番の上に立ちつづけた。点検表を取って戻るはずだった時刻が過ぎ、さらにもう一つの時刻が過ぎた。東端の点検室の時計はまだ動いていた。何時まで進んだのか、彼は見にいかなかった。彼は動かなかった。

点検簿の最後の一行には「十七番:未点検(自己点検は数に入らない)」と書かれていた。その一行は彼が自分で書いたものだった。

その一行を、彼は線で消さなかった。

彼女は前へは進まなかった。

彼女は体重を十六番に預けたまま、緩めなかった。

「わたしが、二人目です。」

言うとき、顎は動かず、声も高くならなかった。グレーチングがそれを受け止め、長く引き延ばした。二つの塔のあいだの闇の中まで引き延ばし、A字脚にぶつかって、また戻ってきた。彼女の耳もとへ戻ってきた。橋の向こう端で誰かが一声応えたかのように。

十七番の上の男は応えなかった。肩は動かなかった。十七番の柱頂の環は、ほかのより光っていた。彼女はそれを見たが、触れにはいかなかった。彼女は十七番のほうを一目見た。長いあいだ見ていた。箱のほうがもう鳴らなくなるまで、長く。

親綱はもう震えなかった。張ったまま、まっすぐに十六番から十七番へ通り、二メートルの空をわたっていた。一方の端が彼女で、もう一方の端が箱だった。彼女は息を吸った。三拍。吐き出す。五拍。下のA字脚は風の中に立ち、一本も動かなかった。遠くを飛行機が一機、低い音で、南のほうから過ぎていった。過ぎていった。

彼女は二人目だった。手にはスパナもなく、点検表もなく、札もなかった。あるのは体のハーネスと、十六番に掛けたフックだけだった。足にはまだ靴が二つあった。一つはサテン、一つはスニーカー。

彼女は当番簿のあの一行を思い出した。船の番号、位置の欄には「橋の下」、状態の欄には「未通過」とあった。そのページは彼女が点検室でめくったものだった。紙は白く、字の墨の色はとても淡かった。

風が二つの塔のあいだを吹き抜けた。雲が一つ押しのけられ、黒い一角が覗いた。

その黒の中、北北西の空に、あの円が掛かっていた。

頭を少し上へ反らさなければ、その縁まで収まらなかった。縁は淡い紫で、とても薄く、明るい側の縁しかはっきり見えなかった。明るい面は六割だった。白い雲がその前を過ぎていく。一塊、また一塊と、動かずに。雲の上の縁は明るかった。円の下の縁を、雲が一部押し隠し、また吐き出した。淡い紫の縁が雲の向こうで一度明るみ、また暗くなった。暗い側は、輪郭が一筋見て取れるだけだった。黒い口はその左上にあった。円より少し高く、西寄りだった。口の縁には細い白い輪があり、輪の外の星はねじ曲げられていた。彼女は五つ数えた。どれも曲がっていた。

彼女は一目見た。

それが何なのか、彼女は知らなかった。誰も教えてくれたことはなかった。その黒い一角はすぐに閉じた。雲が端からゆっくり押し戻ってきて、円を半分押し隠し、さらに半分押し隠した。

彼女は視線を戻した。グレーチングの上へ、十七番のあの一枡の上へ戻した。その一枡は明るかった。灯りが上から落ちてきていた。白く、とても澄んでいて、周りに滲みはなかった。ほかの枡は暗かった。

橋の北側では、街の灯りが一層また一層と下へ敷き広がっていた。道には車があり、車のライトは白く、一連なり、また一連なりと続き、どの連なりも同じ方向へ向かっていた。彼女は車を数えなかった。

マルヤムの安全帯にはカラビナが一つ付いていた。彼女自身のもので、胸もとに掛けてあった。カラビナの内側には擦り跡が一筋あった。二年かけて擦れてできた、ごく浅い白い線で、爪でこすっても落ちなかった。

三年目の初日、朝五時四十分、東タワー第一班は検問所に集合した。

彼女は四時五十分に起きた。枕もとの目覚まし時計は自分で買ったもので、秒針が軽く進んだ。彼女はしばらくそれを聞いてから起き上がった。バス停の灯りは点いていた。バスが来たとき、窓には水の筋がついていて、斜めに流れ落ちていた。車内で作業着を着ているのは彼女一人だった。車内放送が停留所を告げた。ツインタワーを告げるときの声は、ほかの停留所を告げるときと同じで、二度告げた。道端に朝食売りが一人いて、蒸籠を一段ずつ積み上げていた。半分まで積んだところで手を止め、バスを一目見た。彼女は前から二列目に座り、カラビナを服の中から出して手に握った。それが温まるまで握って、また服の中に戻した。

彼女は東タワーで四年働いていた。最初の二年は基部のホールで床を拭いた。ゲートのほうまで拭き、エレベーターホールの入口まで拭いた。そのあと班長が、東タワー第一班は人手が足りない、橋に上がれるか、と訊いた。彼女は、上がれます、と答えた。カラビナはそのときに支給された。ベルトが一本、カラビナが一つ、細い紐が一本。

初めて橋に上がったのは二年前の春だった。プラットフォームの風は強く、彼女は三度掛けてようやくしっかり掛かった。掛けるたびに一度引いた。ゲートが噛んだのを確かめてから、やっと手を離した。班長は点検室の入口に立って見ていて、近づいてはこなかった。彼女は一本目のアンカー柱まで歩いて掛け、それから二本目まで歩いた。橋は五十八メートルある。彼女は数えたことがあった。その日、三度数えた。

東タワー第一班の仕事には、スカイブリッジの東端でするものもあった。点検室の、橋に面したガラスは月に一度拭く。ガラスの手の跡を拭き、風が吹きつけた埃を拭き、鳥がとまった跡も拭く。拭く前にはまずフックを掛けなければならない。プラットフォームの一本目のアンカー柱の環に掛けて、それから中へ入れる。点検室の机を彼女は拭いたことがあったが、机の上の点検簿には触れたことがなかった。二十回あまり拭いた。掛けるたびに、彼女は胸の前を一度叩いた。一度叩けば、しっかり掛かったことにした。

朝の基部のホールはまだ開いていなかった。床は濡れていて、灯りは半分しか点いていなかった。通りには水たまりがあり、彼女はよけて通った。水の中に何があるかは見なかった。通用口から入り、東側の通路に沿って歩いた。通路の壁には告示が何枚か貼ってあった。紙は白く、字は黒かった。彼女は足を止めて読まなかった。バケツとモップは持ってこず、更衣室の入口に置いてきた。バケツの水は昨日のもので、もう冷たくなっていた。

検問所は通路の突き当たりにあった。鉄の扉が一枚。扉の枠の両側に、それぞれ白い蛍光灯が一列並んでいた。蛍光灯はまっすぐで、カバーは乳白色だった。一列に三本。彼女は数えたことがあった。全部で六本。扉の枠には鉄のプレートが一枚打ちつけてあり、番号が一つ刻まれていた。毎日その下を通るのに、彼女は読み上げたことがなかった。壁の時計は六時五分前を指していた。扉の脇には銀白の遮断バーが二本、両側に収まっていて、下りてはいなかった。鉄の扉は開くとき、長く擦れる音を立て、閉まるときには短く一度鳴った。扉の中には机が一つあり、机の向こうに人が一人座っていた。彼女はその人の顔をよく見なかった。見えたのは片手だけだった。指は細く、爪は短く切られ、袖口は前腕までまくり上げてあった。その手の甲には古い傷跡が一筋あり、指の付け根から手首の骨まで斜めに走っていた。

第一班は全部で十一人。彼女は数えたことがあった。彼女は最後に並んでいた。前の人たちは扉の前まで行き、カラビナを胸の高さに掲げ、白い灯りの下で一度かざして、中へ入っていった。そのうちの一人は彼女の知っている人だった。その人は扉の前で一度振り返り、彼女を一目見たが、何も言わなかった。

彼女の番になった。

その手が彼女のカラビナを受け取り、裏返して、灯りにかざして一目見た。

その一目は速かった。指が擦り跡の上で一度止まった。止まっていた時間は、二まで数えるより少し短かった。彼女の親指はカラビナの反対側を押さえていた。そちら側の金属は平らで、擦り跡はなかった。

それから、その手が白い札を一枚裏返した。白い札の角は擦り減って丸くなっていて、裏返すとき、ごく軽い紙の音がした。札の表が外を向き、「未通過」とあった。

遮断バーは下りず、扉も開かなかった。

彼女は言いたかった。プラットフォームの一本目のアンカー柱の環の内側にも、擦り跡が一筋ある。ガラスを拭いているときに見たことがある。あの一本は通っている。彼女は口に出さなかった。その手はもうカラビナを彼女の掌に戻していた。掌は冷たく、カラビナも冷たかった。彼女は親指でゲートを閉じた。カチッと音がした。

彼女は検問所の外に立っていた。扉の枠の前、床のタイルに白い線が一本塗られていた。線の外は通路で、線の内は扉だった。彼女は線の外に立っていた。扉が一度開くたびに、彼女は灯りを一目見た。灯りは白かった。扉が閉まっても、灯りは白いままだった。扉がまた開いても、灯りは白いままだった。それは一度も暗くならず、ほかの色に変わることもなかった。

扉の中の人は一度交代した。あの手が紙の束を置いた。紙の端が入口の風にめくれ上がり、また落ちた。

規程を誰が決めたのか、彼女は知らなかった。検問所の壁には紙が一枚貼ってあり、何行か字が印刷されていた。彼女は離れていて、近づいて読みにはいかなかった。

彼女は帰らなかった。壁にもたれて立った。壁は冷たかった。班長が通路の向こうから歩いてきて、カラビナを一目見て、一言言ってくれるかもしれないと思った。班長は来なかった。足もとの床は濡れていて、冷気が靴底から少しずつ上がってきた。ゴム底の靴で、底はとても薄かった。彼女は重心を左足から右足へ移し、また戻した。

第一班の人たちはみな中へ入った。扉が閉まったあと、外には彼女と、扉の枠の両側の二列の蛍光灯だけが残った。

通路を誰かが歩いていった。足音はとても軽く、入口まで来て一度止まり、また行ってしまった。

第一班の給料は班ごとに計算される。一班ぶん欠ければ、月末の給与明細から一行が消える。その班の最初の仕事は、点検室のガラスだった。彼女は毎月あのガラスを拭いていた。橋の線が見えるようになるまで拭いていた。

彼女は両手を作業着のポケットに入れ、折りたたんだシフト表に触れた。シフト表には彼女の名前が書いてあり、名前のあとの一枡は空いていた。彼女は取り出さなかった。

東の空が一層白んだ。扉が開き、交代の人が中から出てきた。手に紙の束を持ち、一枚ずつ配っていった。第一班の仕事がもう配り終えられたのが見えた。どの仕事にも受け持つ人がいた。彼女のぶんは、とうに誰かの手にあった。

塔の影が基部のガラス戸の上を斜めによぎり、通りの向こうの歩道まで落ちていた。影の先端は、彼女には見えなかった。

通りに最初の一台が来た。ライトはまだ点いていて、車は交差点に停まり、誰も降りてこなかった。

彼女は夜が明けるまで検問所の外に立っていた。検問所の灯りは、まだ白かった。